ローリングウエストが登山を通じて、感じ取ったもの・知り得たものを「山紀行文」にまとめ、皆様にこれから公開していきたいと思います。
この山紀行に掲載しているヘッダー写真は、秋田の名峰「鳥海山」です。
右には朝日に当たって輝きだす実物「鳥海山」岩峰、左(岩峰の後ろ)にピラミッド形 のシルエットが見えますが、これは日本海に浮かぶ鳥海山のシルエットで「影鳥海」と呼ばれています。
鳥海山の影の背景には、水色の直線(水平線)も認識できるでしょう。
左下に日本海海岸線(酒田・象潟の街)が広がります。
「影鳥海」は登山者にとってはなかなか遭遇できない憧憬の自然現象のひとつです。
関西に住んで1年以上となったが、初めに驚いたものの1つは「高級住宅・マンションが山あいにビッシリ建っている」ことである。
「夜景はきれいだけれど、何故こんな急な坂を登り、 買物・通勤に不便な場所に競って住みたがるのかなぁ」と不思議に思った。
このような光景は阪神間(宝塚・西宮・芦屋・神戸)の山手、東西に連なる六甲山系の麓に集中している。
田園調布・成城の瀟洒な住宅群が丹沢山麓全体にこぞって広がっているようなものであり、大都会と自然が近接したこのような憧憬感のある住宅風景は日本の中でも極めて独特なものに思える。
エキゾチックな港町神戸や高級イメージをもつ芦屋・宝塚・西宮山手の背後に屏風のようにそびえる六甲山は、交通の便もよく手軽に登れる市民ハイキングの山であるが、東西の長さは40km以上の規模をもち全山縦走するには12-13時間かかる長丁場を覚悟しなければならない。
今までいろいろなルートで六甲山ハイクを楽しんできたが、1度は全山縦走に挑戦してみたいと予てから思っていた。
蒸し暑くなる前の5月下旬は日照時間も長くトライの最適時期であると思い立ち、会社の仲間を誘い2人で朝5時、宝塚の塩尾寺から縦走を開始した。
気持ちのいい朝日が昇り始め、岩倉山譲葉山を越していくと宝塚の住宅街や西宮カントリークラブ゙・甲山などが左手に見えてきた。
前方にはなだらかな六甲山最高峰(931m)が新緑に包まれて優しく広がっている。
出発後3時間半、最高峰に到着。
普段であればハイカーや観光客で賑わう山頂もまだ朝の8時半、人の数も疎らである。
山頂から凌雲台に向かう縦走路は輝く新緑にヤマツツジが咲き誇っており、明るく爽快感あふれる山道が続く。
まさに一番快適な季節・・・。
宝塚側からなだらかな六甲最高峰に向かう
新緑とヤマツツジのコントラストが続く山道
凌雲台からは、左手に芦屋ロックガーデンが見える。
ここは風化した大きな花崗岩群が露頭した六甲の人気ハイライトコースであり、日本の近代アルピニズムの発祥地として有名だ。
程なく行くとレストラン展望台に出たが、まもなく10時。
この時間となると車やロープウェイで上がってきた観光客が増えてきた。
今度は六甲山ゴルフ場の中を通り抜けていく。
ここは日本のゴルフ発祥地であり、神戸ゴルフ倶楽部が経営している。
黒塗りの車ばかりが駐車してあったが、フェアウェイは傾斜がきつく狭いコースだ。
ラウンドしたら間違いなく大叩きしそうである。
近代登山とゴルフのルーツを2つも抱える六甲山、かつて神戸に居留した外国人たちがこの身近な自然をこよなく愛し、日本にスポーツ文化を残した歴史の足跡を知ることができる。
ここから先はアスファルトのドライブウェイ道路を歩く。
固い道を歩くのは疲れるが、摩耶山までは山道が殆どないので仕方がない。
六甲山牧場で昼食休みを取る。
家族連れで賑わうファミリー牧場で羊や乳牛などが放牧されており、非常にあかぬけた牧歌的な風景が広がる。
2時間の車道歩きで案の定、足が棒のようになってきた。
すでに出発から8時間以上歩き続けているのだから当然なのだが・・・。
途中には摩耶山天上寺という古刹があった。
大化の改新時代の創建で、お釈迦様の生母・マーヤ夫人をまつってあることから摩耶山の由来があるという。
広い駐車場とロープウェイ駅が頂上にある摩耶山からは、神戸の街・港が全貌できる素晴らしいパノラマが広がっていた。
この展望エリアは掬星台と呼ばれる。
神戸1000万ドル夜景は有名だが、空と街のきらめく
無数の☆を掬(すく)えるくらいの美しさからこの名が付いたのに違いない
明るくあかぬけたムードが広がる六甲牧場
大峰山は女人禁制・修験道の山である。
山上ケ岳・大普賢岳・弥山・八剣山(近畿最高峰)・釈迦ケ岳など1,500〜2,000m未満の山々が南北に連なっており山脈全体を大峰山と呼んでいる。
紀伊半島中央部を貫く長大な脊梁山脈(ソメイヨシノで有名な奈良吉野山から和歌山県境まで及ぶ)は南北150kmにも及び、このスケールは北アルプス・南アルプス・東北の飯豊朝日連峰に匹敵するものではないかと思う。
近畿にこんな長大山脈があったとは・・!
昨年の大杉谷・大台ケ原に続き、自分の山国イメージがまた衝撃的に壊され、リニューアルされてしまった・・・・。
女人禁制といっても全山に女性が登れないという訳ではない。
修験道本山の大峯山寺がある山上ケ岳の周辺だけが行者修行の場となっており、このエリアに女人は立ち入れないことになっている。
そこには女人結界門という大げさな門が幾つか存在しており、厳格に女性を拒んでいた。
男女平等がナーバスに配慮されている今日において、この頑固さは大相撲の土俵とこの山くらいではないかと思う。
長く深く刻まれた歴史と宗教の重みがそうさせているのだろう。
今回も横浜・静岡時代からの山仲間2人と一緒に登った。
奈良郡山ICで5月2日早朝に待ち合わせ、車2台で奈良の深南部へ向かう。
万葉の大和三山(畝傍・耳成・香具山)・高松塚古墳などで有名な日本のルーツ明日香村を途中で通過していく。
「ここが高校時代に古文・歴史で習った懐かしい地名か・・・その里を通っているんだなぁ・・」
と感激!ワクワクと心が躍り始めた。
稲村ケ岳でのキレットにて